#2 アスリートが毎回のトレーニングセッションで追い込む必要があるのか?

怪我予防・コンディショニング
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こんにちは。

大学アメリカンフットボールとプロラグビーチームでS&C(ストレングス&コンディショニング)コーチをしている田所海斗です。

今、大学アメフトはオフシーズン期真っ只中で私がサポートしているチームもこの時期は筋肥大と最大筋力の向上が最優先になっています。

私自身大学ではアメリカンフットボール部に所属していたので、この時期のトレーニングのツラさは思い出しただけで筋肉痛になりそうです笑

さて、オフシーズン中トレーニングの頻度が増えていく時に、「とにかくできなくなるまでやる」のが絶対で、毎回のトレーニングセッションで必ず出し切らせてほしいと言われることが時々あります。
大前提として、トレーニングをする上で限界ギリギリまでトレーニングをする、というマインドはあって当然なのですが、その「限界ギリギリ」のボーダーラインの認識に差があるように感じています。
実際の現場では、S&Cコーチとしてコンディション管理も大切な仕事の一つなので、きちんとスキルコーチ側とコミュニケーションをとっていく必要があります。また、大学から競技を始めるという人もいるので、選手がアスリートのトレーニングを理解し、トレーニングリテラシーを身につけてもらうための知識提供も定期的に行っていきます。

近年では「完全に反復できなくなる手前まで」で種目は終えておくのがアスリートのトレーニングでは一般的になってきていると思いますが、例えば、VBTのように加速度計を用いてバーベルの挙上速度をモニタリングし数値化することでコンディションを見極めていくことができればいいですが、そもそもS&Cコーチがいなかったり、そういったデバイスを使えない環境でトレーニングしている選手やチームも多いのが現状なので、今回は、なんで「反復できなくなるまでやらない方がいい」と考えられているか、その基本的な根拠を書いていきます。

「追い込む」について

「追い込む」のそれぞれのボーダーライン

具体的にはこんなイメージです↓

・スキルコーチの追い込む→自力でできなくなってから補助してもらって数回繰り返す
・私の認識→自力でできなる寸前までで止める(90%程度)
※個人の見解なので、全てのスキルコーチがそうだとは限りません。

私は大学時代、練習で3部練(フットボール練習を午前と午後、午後練後のウエイトトレーニング)なんて当たり前にやっていた時期もありますし、オフシーズンのトレーニングではスクワットとデッドリフトをそれぞれ合計200レップずつやっていたこともありました。
※ある一定の期間のみ

そういった身体へ負荷をかけ続けた期間があったからこそ、強くなった感覚はありましたし、また、今で言う「レジリエンス=根性」も身についたのは事実です。

しかしながら、アスリートの指導をする上で、毎回のトレーニングを「どこまで」やらせるのか?を知ってもらうことは、チームのフィジカルの底上げだけに限らず、チームに対してのコンディション管理をしていくために大事なことだと考えています。
なぜなら選手・スタッフも少ないチームでは結局のところ選手一人一人が「自己管理」できるようにならないとチームが強くならないし、試合期にパフォーマンス発揮することが難しいからです。
また、限界までやるかどうかが、そもそもトレーニングする時に1番大事な重量の設定にも関わってくるからです。

実際追い込むのは必要?

限界まで反復することは昔から議論されてきていることです。

Stoneら(1996)は、複数の先行研究を整理したレビューの中で、筋力・パワー向上においては「トレーニング強度や全体の設計の方がより重要である可能性が高い」と述べており、
筋力とパワーの向上におけるトレーニング効果を誘発する上で、「1日当たり/1週間当たりのトレーニング強度」とエクササイズの相対強度(1RMに対する割合)がより重要な因子であることが示唆されています。
つまり、レップを重ねて疲労させることはトレーニング効果を誘発させる因子としては根拠が薄いと考えられます。

また、限界まで行うトレーニングの潜在的に有害な影響として、

  • オーバートレーニング
  • あと1回をこなそうとして不適切なテクニックや姿勢を取ってしまう
  • 筋腱への過負荷損傷と急性損傷の両方を高めるリスク

などが考えられます。

そもそもアスリートにとってのトレーニングとは、「競技練習で怪我をしないために身体を鍛える」ことなので、これでは本末転倒です。
もちろん実際はこうならないようにトレーニング負荷、トレーニング量(週あたり、月当たりのボリューム)、頻度などを調節して防いでいきます。

エクササイズテクニックを最優先にトレーニングをするべき

初心者は特に気をつけろ!

この限界まで行うトレーニング法が筋肥大反応を促進する、という説があり、またそういったトレーニング法を信念にトレーニングをされている方もいるのは事実ですが、間違っていけないのは、そういうトレーニングができる人は、そもそもトレーニング上級者で経験値も高く、エクササイズテクニックの精度や筋力も高い水準を体に備えているから可能なわけです。

普段指導している大学生アメフト競技者でも、大学に入ってからウエイトトレーニングを開始する、という人がほとんどです。
そこからの経験上、トレーニングを始めて1年くらいで、ある程度ベーシックな種目ができるようになって来て(スクワットやデッドリフト、ベンチプレス、懸垂など)、2年生になる年のオフシーズントレーニングを経て強くなり始める、という印象を持っています。
3年生から4年生にかけてほぼできないことがなくなるので、少なくとも2〜3年のスパンで体の土台を作り上げていくことを考えていくと良いと思います。

なので、やはりトレーニング全般、正しい用法容量を守りながら確実に続けていくしか強くなる道はないなと感じます。
また、チームのS&Cコーチとしては正しいテクニックを身につけさせる&筋力をしっかりと向上させることが1番大事なので、オフシーズンは選手にトレーニングを頭で理解してもらうのも含め、徹底的に仕込んでいきます。

「限界」を知ること自体は必要!

しかしながら、あえて初心者には「限界を知ってもらう」ことはします。子供に青信号と赤信号を教えるのと同じことですが、実際に自分の身体で「限界」を感じてもらわないことには調節ができません。
限界に至るまでにかかったレップ数と自分で設定した重量がその時のトレーニングプログラムで設定されている強度(1RMに対しての割合)的に合っているかどうかの確認も兼ねて、初めの段階で自分の許容量を知ることはとても大事なことです。


なので、最初に限界を教えたらあとは定期的に筋力測定で成長度合いをチェックしたり、プログラムの中で重量の見積りが甘くないかのチェックができるように作り込んでいく、というのがトレーニングの質を均一化していく方法論になるかなと思います。

まとめ

追い込みすぎないほうが良いとはいっても、「絶対限界までやりたいんだ!」という人は尊重するし、現場のリアルとしてはこっちの方がレアケースですね。
大体の人はやりたくないので、基本はケツ叩いてしっかり正しいことをやってもらい、身体で覚えてもらうために色々工夫していくのがコーチングだと思っています。

まあでも、卒業してから同期と食事をしていると、トレーニングのツラさについても会話に花が咲くので良い思い出です。笑

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