こんにちは。
S&C(ストレングス&コンディショニング)コーチの田所海斗です。
自主開催セミナーをするにあたり根本的なトレーニングをする目的を整理しているところなのですが,なぜレジスタンストレーニングがパフォーマンスの改善に役立つのか,怪我を予防することになるのか,をこれまでインプットしてきた知識を改めて言語化することでよりクリアになってきました。
今回はレジスタンストレーニングで得たいものは「力積」であるということを,あくまでS&Cコーチの立場で書いていこうと思います。研究者ではないので抽象的な話になってしまうかもしれませんが,現場で指導するときに,「ここが根本的な目的になる」,ということを伝えたいと思っています。
スポーツパフォーマンスとは?(根本的なレベルで)
究極的には2つ
スポーツパフォーマンスを上げるためにトレーニングをするというのは少しずつ一般的になってきているものと思われますが,何を狙ってトレーニングしているのか?はきちんとした専門家のもと指導をされていないと理解は難しいと考えています。
アスリートは難しい言葉を覚える必要はありませんが,体感するトレーニング自体が短期的・長期的に「狙っているもの,こと」は実際のトレーニングを通じて感じていけるといいです。なぜなら,その狙いを達成するために,そのトレーニングをどうやって実行して欲しいのか?という方法論,エクササイズテクニックにつながってくるからです。
アスリートに身につけてほしい身体的な能力はこの二つです。
・力を発揮する能力
・アスリートがエネルギーを利用する能力
これらをトレーニングを通じて体に備えていくことが究極的な目的になります。
力を発揮する能力への依存度が大きい
スポーツパフォーマンスもしくは,私たち自身の運動の多くは外部の物体の運動を変化させることが前提となっています。
物体の運動を変化させるにはその物体に対して「力」を加えることが必要で,自分自身を動かすこと・それ以外の何かを動かす能力も,私たちが力を発揮する能力に大きく依存しています。
スポーツパフォーマンスを身体的な要素に分解すると,走る,跳ぶ,投げる,捕る,止まる,曲がるというスポーツを構成する基礎動作として捉えることができ,これらの動作はその人自身が出す「力」を自分自身もしくは物体に対して力を「伝えた」ことによる運動の変化として現れてきます。
力を発揮する能力がスポーツパフォーマンスを改善するとされている原理はこれにあたります。
「力積」とは?
「力」と「力積」は別物
物理学としての「力積」とは何か?という話はしても面白くないと思うので(というかできません),私がバイオメカニクス的に理解している「力」と「力積」の違いを書いていきます。
・「力」→F=ma(力=質量×加速度),力は加速度を生み出すので速度を変化させる原因になる。
・「力積」→力が一定時間作用することで速度変化が生じる。
「力」自体の値は瞬間量で,力積は「力×時間」なので時間量ということになります。※こういう言葉が科学的にあるかはわかりませんがあくまでも概念的なイメージを説明する言葉として使ってます。
例えば,前にスライド式の大きな壁を押し合うゲームがあると想像してみてください。同じ「力」でも,壁を前に押して行こうと思ったら,力を出し続けないといけないです。
また,壁の向こうには相手がいて,壁を自分の方に押し込んでこようとしています。
つまり,どれだけの力を,どれだけの時間かけたかによって,壁が移動する速度が変化するということになります。
これが,力積です。
スポーツでは「時間」が制約される
ここからがアスリートのトレーニングにとって重要なポイントです。
先に述べたスポーツを構成する身体的な基礎動作では,「長い時間力をかけ続ける」ことができない場面が多いのです。
例えば,スプリント。
エリートスプリンターになればなるほど,
最大疾走速度中の接地時間は0.1秒付近になり,そのわずかな時間しかありません。
そのわずかな時間でも適切に力を発揮し続け,反力として受け取ることが必要になります。
なぜRFDが重要になるのか?
速度変化は力積で決まります。
しかしながら,スポーツでは長い時間かけて力を出している猶予はありません。
そこで,「短時間で大きな力を出す」トレーニング戦略をとっていきます。
ここで出てくるのがRFD(Rate of Force Development)です。
どれだけ速く力を立ち上げられるか?
という能力です。
RFDを高める目的は,短時間で「力積」を大きくするために必要な能力だからです。
具体的には,
・最大筋力を高めて発揮できる力の上限を大きくする
・一定割合の力に速く到達する
ためのトレーニングを行います。
トレーニングを「方法」ではなく「原理」で考える
アスリートのトレーニング指導をする上での目的は先に書いた通りですが,身体的なパフォーマンスを高め,「試合」という環境下で使えるようにすることをしないといけません。
そうなった時に,まず「力積」を生み出す能力にそのトレーニングがどう影響するか?を考えられると種目選択のミスも減ってくるでしょうし,クライアントに足りないものも見えてくるはずです。
「力」をどの方向にどのくらいの大きさで,どの程度の時間を与えることがどのような運動の変化を与えるのか,この構造を理解すると,トレーニングの意味が非常にクリアになります。
まとめ
アスリートのトレーニング目的を考えた時に,
まず理解すべきなのは「力積」をどう作るか?です。
そのための原理があってそれをどのように現場に落とし込み,体系化してチームもしくは選手個人に指導していくか。
トレーニング環境やトレーニング経験など諸々を加味して,そのクライアントにとっての最適化をしていくために根本的な理解があると大きく道を外すことはないのではないかと考えています。


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